なぜ?デザイナーになったのか?

高校を中退していた私には、
選べる職など多くはありませんでした。

朝から夜までただひたすら電話をかけまくる、
電話営業のアルバイトに明け暮れる日々が続いていました。

その職場の自分のデスクから、
一本の大きな銀杏(いちょう)の木が常に見えていました。

あたり前のように、

春には芽吹き、
夏には青々と葉が茂り、
秋には黄色くなり、
冬には葉が落ちて枝だけに・・・

そんな自然のままの姿を2年ほど目の当たりにしていた時に、「給料を上げるから、正社員にならないか?」との誘いがありました。

自分は、このままでいいのか?
これが本当に生きたい人生なのか?

私は一晩寝ずに自分に問い続けました。

私は正社員になる道を蹴り、
高校途中まで没頭していたデザインの道で生きることを決意しました。

とはいうものの、美大や専門学校もでていない。

加えて高校中退の私が、
デザインを仕事にしていくなど無理にもほどがありました。

とにかく目下の仕事を探さねばと
めくった求人誌のとあるページに目がとまりました。

「グラフィックデザイナー・イラストレーター募集」の文字。

私は、ダメもとでそのデザイン会社に
面接を申し込みました。

面接官は、その営業所の所長でした。

所長:「あなたは何志望ですか?」

私:「えっと・・・絵が好きなのでイラストレーターでしょうか?」

そんなことすらもわからずに面接に挑みました。

作品集すらもたないそんな若いだけで勢いだけの私に所長は、

「何か賞とか取ったことはありますか?」

とたずねました。

すっかり忘れていたのですが、
高校を中退する年の初めに
全国公募のシンボルマークデザインで
全国第3位を取っていたことを思い出しました。

そのことを話すと所長は、

「その公募企画に、ウチの会社は関わっていたんだよ」

というではないですか!

学歴も経歴もなかったのですが、これがきっかけで運よくグラフィックデザイナーとしての人生を歩み始めることになったのです。

Macintosh Quadra 950

入社後は、未経験の若い私をいろんな先輩方が、
本当に暖かく導いてくれました。

大手広告代理店のクリエイティブディレクターも、
色んな表現の世界を教えてくれました。

しかし、デザインといっても今とは違い、
超アナログな世界。

それはそれで、味わい深いものもありましたが、
私はファミコン世代。

もっと合理的にスピーディーにデザインできないのだろうか?
と葛藤の日々をおくっていました。

そんな時、あのAppleが開発した
Mac(マッキントッシュ)が
デザイン業界になだれこんできたのです!

それは当時としては黒船来襲、
産業革命なみの出来事でした。

営業所で一番若かった私が、必然とMacによるDTP(Desk Top Publisshing)担当になりました。

教えてくれる人も当然いない。

今のようにインターネットもない。

毎日朝から夜まで、
マニュアルと手探りでの格闘の日々が続きました。

会社でパソコンで仕事をすることは
今でこそ当たり前の日常の風景ですが、
当時は画面を一日中ながめているだけの状態は、
仕事をしているとは思われておらず、
遊ばせておいていいのか?

という声も多く、心苦しい日々が続いていました。

そんな中、とある会社のシンボルマークコンペの案件でMacで出力したものでプレゼンをするとの話がまいこみました。

私も初めてコンペに参加させてもらえることになりました。

ベテランデザイナーのように手書きで丸みをおびたマークやデザインなどは、当時は到底できなかったのですが、

Adobeのイラストレーター3.0をなんとか駆使して、自信作を4案作成し提出しました。

最終的には、全社で40案が揃いました。

その中から、広告代理店(D社)が、
8案に絞ってクライアントにプレゼンするというながれ。

なんとその中の4案に自分がデザインしたものが
選らばれるという快挙を達成。

これだけでも十分嬉しかったのですが、

自分の中では、「絶対にこれがいい!」

と思っていたものが1案だけありました。

予想通り、その案がクライアントに採用!!!

初めてデザイナーとしての歓喜、感動、自信を手に入れた瞬間でした。

※そのロゴは、25年たった今でも鹿児島の地で愛用され続けてています。

この成功体験を原点に、グラフィックデザイン → Web → 映像編集→トータルプロデュースへと幅が広がり、現在に至ります。

私の人生の師匠は、

相手の身になることと働くということは、端(はた=そば)にいる人を楽(らく)にさせたり楽しませる(幸福な気分にする)ことを「はたらく」というのだと教えて下さいました。

これが私の仕事に取り組む美学・哲学・ポリシーです。

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